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古川昭夫さん(学習塾・科学的教育グループSEG主宰)「楽しさの中で見つけたものが自信となり、将来につながる」インタビュー

中高生向けの学習塾、科学的教育グループSEGの代表を務める古川昭夫さん。「楽しく学ぶ」をモットーに、数学や英語を単なる暗記科目、受験科目にせず、楽しさを通じて教えられています。「楽しさの中で見つけたものが自信となり、将来につながる」という古川先生は、どのようにして数学の面白さを見つけ今の道へ進んだのか。歩みを辿りながら、古川先生の教育にかける想いを伺ってきました。
こんな話をしています
経験を必要とする科目で正しさを証明するのは、子どもだと難しいが、数学ならば大人と対等に理論で正しさを証明することができる
「楽しく学ぶ」ことで得た自信を、豊かな人生を歩み、社会でチャレンジすることに役立ててほしい
古川昭夫(ふるかわ・あきお)氏プロフィール
東京都府中市出身。東京大学理学部数学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程修了。 大学生時代より、有名学習塾にて教鞭をとる。 1981年に、中高生対象の塾SEG(科学的教育グループ)を創立。 有名予備校でも教鞭をとり、1985年より、月刊「大 学への数学」に連載を執筆。 英語教育の分野では、SSS英語多読研究会・日本多読学会を立ち上げ、英語多読の普及活動など、教育全般の改革・研究活動をおこなっている。

先を見据えた 真の学びと楽しさ

――学ぶ楽しさを伝える学習塾SEGを運営されています。

古川昭夫氏: SEGは中高生を対象にした学習塾で、「楽しんで学ぶ」をモットーに運営しています。数学でも英語でも、教える側が見落としがちな、抜け落ちがちな原理原則「どうしてそうなるのか」をしっかり説明するところから授業は始まります。

数学であれば「覚えるべき計算公式」をやみくもに覚えさせるのではなく、意味を理解する。英語であれば、「文法、単語、和訳」の暗記ではなく、英語の本を多読して読解力を身につけて、物語を楽しんで身につける。それをNativeの先生との会話で実践する。そうして生徒自らが体験し、考えることを大切にしています。

――(たくさんの洋書に囲まれた教室にて)ここには楽しそうな本がたくさんあります。

古川昭夫氏: ここに来る生徒はABCを覚えたての子から、帰国子女まで英語スキルも様々ですが、易しいものから、なかなか読み応えのあるものまで50万冊以上の蔵書があります。さまざまな種類の本から選んで多読することで、英語を「楽しく」学ぶことが出来ます。生徒の中には、「この本面白かったよ」などと教えてくれたりしますが、そうした生徒たちとのやり取りを私も楽しみながらやっています。

――楽しんで覚えたことは忘れないし、一生使える。

古川昭夫氏: 中高生の貴重な時間を解法や短文の暗記だけに費やすのは、もったいないと思っています。もちろん英語も数学も身につけるためには、それなりに時間をかけないといけません。どうせならその時間を、楽しめた方が良い結果を生むと思っています。

一見時間がかかるように思えるかもしれませんが、楽しく学んで原理原則を自分のものにする方が応用も効きますし、合理的でもあります。私自身も、数学の楽しさを覚えたことから好きになり、それが高じて今の活動につながっていきました。

「楽しい」数学との出会い

古川昭夫氏: 私は東京の府中出身ですが、私の子どもの頃はまだ野原が残っており、よく外に出かけて遊んでいました。そんな調子で、小学生の頃はあまり勉強をしていませんでしたが、文字を読むのは好きでした。父の本棚にあった大人向けの本……税金の本から仏像の写真集まで、意味も分からず“読んで”いましたね(笑)。

数学の面白さに出会ったのは小学校高学年のころで、ある算数の授業時に「おや?」と違和感を覚えたことがきっかけでした。経験を必要とする科目で正しさを証明するのは、子どもだと難しいことですが、数学ならば大人と対等に理論で正しさを証明することができます。そのことに、数学というものの面白さを見いだしました。 中高と当時の東京教育大学附属駒場(現筑波大学附属駒場)へ進むのですが、1年生から『中学数学同好会』を立ち上げ、仲間たちと文化祭で研究発表していました。将来数学の道に進もうと考えており、文集などにも数学の証明や定理などを書いていましたね。

――どんどん数学の道に。

古川昭夫氏: 大学在学中に、中学生の頃に通っていた平岡塾で数学を教えることになったのが、今のキャリアにつながるスタートでした。生徒たちに教えている間に、だんだんと「大学受験のための数学ではもったいない、もっと楽しく学んでほしい」という想いが涌き起こり、「心に広がる数学の世界を!」というスローガンのもと、SEGを立ち上げました。

当時はエレベーターもないビルの5階に教室がありました。その頃から、興味を持ってもらおうと色んな工夫をしていましたが、好評だったのは当時出たばかりのコンピュータ。プログラミングを保存する装置がカセットテープレコーダーという代物でしたが、生徒には大ウケでした。1981年に創立して以来、今年で35年になりますが、そうやって共に楽しんで学んだ数万人の生徒たちがここを巣立っていきました。

楽しんで学べる本を届ける

古川昭夫氏: 巣立っていった生徒の中から、新たに私たちと一緒に仕事をする人も出てきました。最初に一般向けに出版した『世にも美味しい数学』(日本実業出版社)も、出版社に勤めていた元生徒からの依頼によるもので、その元生徒である編集者が“仲間”になって作り上げてくれたものでした。

この本は、架空のレストラン「マセマチカ」を舞台に、イラストを多用し、楽しんで読めるものにしようと、編集者とアイディアを出しながら仕上げました。極限・整数・複素数の世界を味わうという副題で、内容は決して易しいものではないのですが、数学の訓練をしていない人にも分かりやすいような本を心がけました。

こちらの『イギリスの小学校教科書で楽しく英語を学ぶ』(小学館)も、イギリスの学習用図書Oxford Reading Treeを使うことで、通常の英語教育では触れられない生活や文化に密着した「本物の英語」が楽しく学べるようになっています。また、挿絵やイラストを入れ込むことで、知らない単語も推測でき、楽しんで学ぶことが出来ます。こちらもおかげさまで多くの方に手にとって頂き、10年以上経った今でも、版を重ね読まれています。

子どもたちの笑顔を糧に 闘う知恵と自信を育てる

古川昭夫氏: 私は、子どもたちに「楽しく学ぶ」ことで得た自信を、豊かな人生を歩み、社会でチャレンジすることに役立ててほしいと思っています。チャレンジは、立ちはだかる障害との闘いでもあります。時にはそれから逃げたり、耐えたりすることも必要ですが、恐れず闘うことが大切です。

そのための基礎力・知恵、勇気・自信を身につけるサポートをする、未来を生きていく子どもたちの「自分はこれなら出来る」というものを見つける、そして育てることこそが、私の役割だと思っています。
「自分には出来ない」と思ってしまっている子どもたちがいれば、ぜひこの教室で学んで欲しいと思います。未来は変えられます。出来なかったことが分かると、自信がつき、笑顔になります。そうした笑顔を糧に、これからも子どもたちの豊かな未来を学習面からサポートし続けたいと思います。